ダーウィン『種の起源』~進化論は誤解されている!~

Literature

『種の起源』は1859年にイギリスの自然学者チャールズ・ダーウィンが出版した、自身の学説を要約した本です。

ダーウィンと言えば、個々の生物は別々に創造されたのではなく、いくつかの先祖から生まれたものだとする「進化論」が有名ですよね。



進化論は、すべての生物学や体系学、科学論などの、現代の研究分野の方向性の元になっています。そして、そのすべてのエッセンスがこの『種の起源』に詰まっています。

本書を読んだことがなくても、ダーウィンの名と進化論くらいは聞いたことがあると思います。

しかし、本書を読まずに生物学、そして人生を語ることはできないと、訳者の渡辺政隆さんは言っています。

また、ダーウィンの進化論はとにかく誤解されているケースが多いです。

ポケモンの進化であったり「唯一生き残るのは変化できるものだけだ」という名言は、後に解説しますが、ダーウィンの唱えた学説とは異なった意味で使われています。

ダーウィンの学説を正しく理解するには、当然本書を読むのが一番なのは間違いないです。ただ、この本、要約と言いながらとっても長いんです。僕が読んだ光文社から出ているものだと、上下巻合わせて800ページ以上あります。

なので!興味はあるけど読む時間がないという人のために、これだけは知っておきたいということをまとめてみました!

現代人必須の教養として、本記事に書いてあることだけでも読んでみて下さい。

生存闘争と自然淘汰

ダーウィンが本書で遺した大きな功績は、進化の研究を科学にしたこと、そして進化が起こるメカニズムを提唱したことだと、訳者の渡辺さんは言っています。

最初に、「進化が起こるメカニズム」について解説していきます。

私が言う「生存闘争」という言葉は広い意味での比喩であり、生物どうしの依存関係や、(さらに重要な)個体の生存だけでなく子孫の存続までも含んでいるということを、あらかじめ断っておきたい。

ダーウィンは生存闘争についてこのように言っています。

少し難しい言い方かもしれませんが、僕は、ある種が将来世代までを含めてこの地球上に存続しようとするための外部環境(自然環境や他の種、または他の個体)との闘争、という解釈をしました。

地球上には、ヒトを含め、多種多様な生物が棲んでいますが、例外なくこの生存闘争にさらされています。

それではなぜ生存闘争が起こるのでしょうか。

生存闘争が生じるのは、あらゆる生物の増加率がきわめて高いことによる必然的な結果である。

生物は生殖活動によって種を増やし、残していくわけですが、もし生存闘争が無い環境だと指数関数的な(激的な)増加をするからです。

本書では、繁殖が遅いとされているゾウを例に出しています。仮に30歳から90歳までで3回の繁殖を行い、そのつど二頭ずつの子を生むとして計算すると、5世紀後には、1組の親から生まれた子孫が1500万頭にもなります。けど、現実にはそんなにはゾウは増えていません。
現実には生存闘争があるから、ということです。

つまり、地球上の生物は基本的に強い生殖力を持っているが、生存闘争によって現実には個体数を無限に増やすことはできず、種の拡大のために絶えず闘争をしているのです。

その絶え間ない闘争によって、現在の生物体系の均衡を保っていると言えると思います。

ところで、生物のそれぞれの個体には、個体差があります。
私たちヒトにおいても、身長などの容姿から性格まで多様な差がありますよね。

残酷なことでもありますが、生物間の個体差は、生存闘争での有利、不利を生み出します。

生物の生存にとって有用な変異が実際に起こるとすれば、そのような形質をもった個体は、生存闘争において保存される可能性が間違いなく最大になるだろう。そして遺伝という強力な原理により、それらの個体は自分とよく似た形質をもつ子孫を生むことになる。このようにして個体が保存されていく原理を、私は略して「自然淘汰」と呼んでいる。

つまり初めは個体差にすぎなかったものでも、それが生存闘争において有利に働くものであれば、それを持たない個体よりも生存できる可能性が高くなります。

その性質により食料を多く摂取できたり、外敵から生き延びやすかったり、生殖に有利なのであれば当然ですよね。

そして、遺伝でその性質が受け継がれ、長い時間をかけることにより、その性質を持つ個体の数は増え、性質自体もより顕著なものへとなっていく傾向があります。これが蓄積されると元の種から変種へと移行し、さらに時間を重ねると別の種とされるまで変異することもあり得ます。

また、各個体は常に生存闘争にさらされているため、有利な性質を持たない元の種は、新しく生まれた変種によって絶滅させられてしまう可能性が高いのです。

この繰り返しで地球上の多種多様な生物群が生み出され、増えすぎることはなく秩序を保っているのだとします。

地表に生息する無数の生物は、新しい構造を獲得することで互いに闘争し合い、最も適応したものが生き残る。それを可能とする構造上の重要な変更が生じるのは、個体にとって有益な差異を着実に蓄積する自然淘汰の作用なのである。

以上がダーウィンの唱えた進化論の概要です。

現代的意味

次に、「進化の研究を科学にした」ことについてです。

あまり知られていないことですが、生物の進化論を最初に唱えたのはダーウィンではありません。しかし以前までの進化論は、進化というテーマと証拠が欠けているという理由で、学界では酷評されていました。

それは進化論の性質上、個々の生物の進化を実験で再現できないからです。再現性の無いことは科学としては扱われません。また、当時は個々の生物は個別に創造されたとする「創造説」が主流だったため、進化論は受け入れらにくい風潮でした。

それではダーウィンはどうしたのか。

自身の仮説を構築し、徹底的にその検証を行うことにより、進化論に科学性を持たせたのです。

それだけ?と思うかもしれませんが、ダーウィンの行った検証はとことん徹底的です。

本書は14章からなりますが、進化のメカニズムなどの学説の概要は、前半5章で殆ど説明を終えています。残りの章では、想定しうる反論や自身の学説の難題を、あらゆる例を持ち出しながら丁寧に反復もしながら考察していきます。

そして進化論という、当時からすれば夢の様なお話に、徹底的な論証によって科学性を与えることに成功したのです。

すぐに学界で受け入れられたわけではないみたいですが、ダーウィンの徹底的な論証は通説だった創造説の牙城を崩し、世界に衝撃を与えました。

後ににその夢の様なお話が、現在の科学技術、特にDNAの発見によって正しかったことが分かったのは言うまでもありませんね。

この徹底さが、本書を要約にも関わらず冗長にし、800ページを超える大著にしています。

つまり、150年も前に書かれた学説を現代の私たちが読むべき理由の一つとして、この入念すぎる論証を追体験することがあるのです。

進化論の誤解

出典:https://earthsky.org/human-world/did-hms-beagle-voyage-lead-to-charles-darwins-poor-health

「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」

僕も本書を読む前からこの言葉を知っていて、読み進めながらいつ出てくるのだろうと楽しみにしていたのですが、ついに最後まで出てきませんでした(笑)。

そもそも、読んでみると分かりますが、ダーウィンは本書で「変化できる者だけが生き残る」とは言っていません。

ダーウィンが言ったのは「生存闘争において有利な変異を持った個体が自然淘汰によって選抜され、結果的に生存することができる」ということでしたよね。

しかし、この言葉やポケモンの進化では、一つの個体自体がカメレオンの様に変化するという意味で使われています。ダーウィンも言うように「自然は飛躍せず」なので、進化とはとても長い時間をかけて少しずつ起きます。

現実問題として、変化できる個体は生き残りやすいかもしれませんが、それは変化できるという性質によるものであり、進化論とは直接の関係はありません。

さらに驚くことに、ダーウィンのものとされる上の名言、ダーウィンが言ったものではないそうです。
そんなことがあるのか!という感じですよね(笑)。

どうやら、ダーウィンの学説を自由に解釈した経営学者が自身の論文に記したものが、引用を重ねられた結果、ダーウィンの発言として世に広まってしまったそうなのです。

一次資料にあたる大切さをしみじみと感じますね。

ここまで読んでくれた皆さんは、くれぐれも誤った使い方をしないようにして下さいね。

おわりに

1859年に出版された本書は、専門家向けの学術書ではなく、一般の人向けに普通の書店で販売されたものだそうです。確かに生物の知識が必要な部分はありますが、生物学に無知な僕が読んでも理解出来る内容でした。

素人の僕がここで書いたことは、長大な本書のほんの一部にすぎません。

もし興味を持った人は、是非本を手にとって読んでみて下さい。

生物学という枠を超え、私たちヒトが生きるということのヒントになるような、示唆に富む言葉もたくさんあります。

訳者の渡辺さんはこの様に言っています。

『種の起源』を読まずして生命を語ることはできないのだ。

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