こんにちは。
僕は物心がついた頃から、言葉がスムーズに出なかったりつっかえてしまうという吃音症というものを持っています。
そんな僕が、この吃音症というのは一体何なのかを、自らの経験も踏まえてお話していきます。
ちなみに吃音症のことを詳しく知りたい方は、以下の本がおすすめです。
医師で自らも吃音を持つ菊池良和さんが、自らの経験と医師として集めた科学的根拠をまとめた本で、吃音症について正しく理解することができます。
本記事においても大いに参考にさせてもらっています。
吃音症とは

まず、吃音は3つに分類することができます。
- 連発性
- 伸発性
- 難発性
分類できるといっても、必ず吃音症の人は上記のどれか一つのだけを持っているというわけではなく、難発性の症状が出る時と連発性の症状が出る時がそれぞれあったりします。
「わたしのなまえは」
と言いたい場合を例にして3つの症状を解説します。
連発性の吃音
連発とは、文字通り発音がつっかえることにより、1音を繰り返し発音してしまうことです。
「わ、わ、わ、わたしのなまえは」
のようなケースです。
このケースは吃ったと分かりやすいため、吃音がない人からすると一番想像しやすい症状だと思います。小学校くらいの時には、クラスにいたのではないでしょうか。
しかし、つっかえたとしても発音はできており、コミュニケーション自体は容易なため、個人的には一番軽い症状であると考えています。
伸発性の吃音
伸発とは、1音を伸ばして発音してしまうことです。
「わーーーたしのなまえは」
といったケースです。
この場合だと、少し不自然に聞こえはすると思いますが、あまり吃音だとは思われないと思います。
難発性の吃音
難発とは、つっかえたり伸ばしたりすることすらもできない、つまり全く発音ができなくなることです。
「………わたしのなまえは」
「…わたしの……なまえは」
…の時は発声していないわけですが、決して話者は考えながら話しているわけでもなく、言葉に迷っているのでもなく、頭にある言いたい言葉が喉から出ない状態にあります。そして発声しようと力み、顔は硬直します。
しかし、周りからすると思慮深い人なのかなとか、すごくためて話す人だなと思われることが多く、吃音だと認識されないことが殆どだと思います。
僕自身もそうなのですが、難発性の吃音は周囲に症状を理解されにくい上に、コミュニケーションを難しくしてしまうため、非常に辛いです。
予期不安
吃音症の難しい問題として、いつ症状が出るか本人にもよく分からないということがあります。
緊張している時など、症状が出やすいという状況はあっても、必ず症状が出るわけではないことが対応を難しいものとしています。
ただ、何となく吃りそうだなという予感のようなものを感じることは多々あり、これを「予期不安」と言っています。
実際に吃るかどうかは分からない(肌感覚だと8割は吃る)ものの、吃りそうということは分かるため、吃音の人は、この予期不安を感じる行為を徐々に避けるようになっていきます。
雑談中とかに「あ~ここでこれ言ったらウケるな」とか仮に思ったとしても、もし予期不安を感じたら言わないでおくという人は、僕だけでないと思います。
他にも、もし発言したい意見があっても、予期不安を感じると、吃って言えないことを恐れて結局発言しないなんてことはザラにあります。
吃音の隠し方
吃ってしまいそう、または吃ってしまった時、多くの吃音の人は、何とかその吃りを隠して吃っていないように見せようとします。
隠し方にはいくつかあるみたいですが、実際に自分が行ったことがあるものをあげます。
挿入
これが一番多く使うパターンで「えっと」や「え~」などを話し始めに加えます。
「えっと、わたしのなまえは」
または
「え~~わたしのなまえは」
といった具合です。このような話し方は吃音でない人もしているため、吃音を簡単に隠すことができます。
ただ、挿入をした後スムーズに話し始められればいいのですが、僕のような難発性の場合は、
「えっと、えっと、………わたしのなまえは」
となってしまうことがあります。
助走
話し始めに関係のない言葉を付け加えることもあります。
「すいません、わたしのなまえは」
「こんにちは、わたしのなまえは」
といったかたちです。
この場合は、必要のない言葉を文頭に付け加えていますが、別に不自然ではないので、本当は先頭の文字の発音がしにくいことは隠すことができます。
置き換え
言いにくい言葉が文頭にある時は、順番を入れ替えることもあります。
例えば、
「わたしのなまえは、いどっちです」
と言いたいけど「わ」が発音しにくいと感じた時には、
「いどっちです、わたしのなまえは」
という風に言ったりします。
若干不自然かもしれませんが、意味は問題なく通じるので吃音を隠すことができます。
言い換え
そもそも本当に言いたかった言葉を変えてしまうということもあります。
「わたしのなまえは」
と言えばいいところを「わ」が発音しにくいために、
「じぶんのなまえは」
というように言葉を変えてしまうのです。
上の例だとそんなに問題がないように感じるかもしれませんが、必ずしも全く同じ意味の言葉を瞬時に思いつき変更できるわけではないので、相手に本意とは違うことを伝えてしまうことがあります。
また、接客などだと定型文を言う機会がありますが、これらは言い換えが許されないため非常に厳しいです。
吃音症の原因

吃音を持つ人や周囲が障害を認識した後に考えるのは、その原因ではないでしょうか。
原因については一言で言うと、現段階ではよく分かっていないみたいです。
もちろん研究等はされているみたいですが、確実な原因については分かっていないみたいです。
ただ、有力な説はあるみたいで、現在世界の研究者では「生まれ持った体質(DNA)が原因で生じる」という共通認識があるみたいです。具体的には、DNAの影響が7割という説です。
つまり後天的な環境というのは、吃音症の発症にはあまり関係がないということです。
社交不安障害とは

社交不安障害(SAD=Social anxiety disorder)とは、吃音を持つ成人の半分が持っていると言われている心の病です。
日本では、対人恐怖症(あがり症)と言われているものです。
例えば、発表の時に、緊張するだけでなく、恐怖から動悸や赤面、発汗、震えなどの症状が出ます。他にも以下のような症状があるようです。
・人と接するのが極端に怖い、緊張する
吃音の世界より引用
・周囲からの視線が極度に怖い
・注目されると緊張で赤面する、汗をかく
・人前で電話をかけるのが怖い
・人前で食事ができない
・人前で文字を書くとき、手が震えて書けない
・周囲に人がいると用を足すことができない
僕の場合だと、飲食店で注文をするのが苦手で、メニューを言うだけで緊張して汗をかくことがあったりします。
また、その時は、相手の目を見て話すと吃ってしまうので、目を合わせないように喋っていたりします。
社交不安障害ではない人でも当てはまるものもあって、そんなのみんなそうだよと思われるかもしれませんが、同じ障害を持つ人であればこの辛さが分かると思います。
社交不安障害は治すのが難しい障害のようです。
社交不安障害の自然治癒率は、半年で8%、二年で20%とされますが、一方、8年経っても36%の自然治癒率しかありません。また、自然治癒した場合でも、4〜5年で30%の人が再発するという難治性の疾患です。
吃音の世界より引用
そしてこの障害が及ぼす一番の影響は、障害により様々な機会を避けてしまうこととと、人に誤った印象を持たれてしまうことだと僕は考えています。
おわりに
吃音の症状について分かりやすく書いてみたつもりですがいかがだったでしょうか。
もっと詳しく知りたい人は、始めに紹介した菊池先生の本がおすすめです。
吃音の症状はささいなことかもしれませんが、それが引き起こす二次的な影響(人前で話せない、言いたい言葉を言えないなど)が重くのしかかります。
普通の人が普通にできていることが、自分にはできない。
人生のあらゆる選択を、自分ではなくて障害に握られているように感じる。
これらで僕自身悩みました。もちろん今も悩んでいます。
明確な治療法がなく、難治性の二次障害である社交不安障害を伴うこともある吃音症は、非常に難しい障害です。
そんな吃音症について一人でも多く理解して頂ければ幸いです。
そして、吃音症に限りませんが、障害を持つ人をそれを個性として自然に受け入れられるような社会になればいいなと思っています。
最後まで読んでありがとうございました。
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